全生園の桜
例年、ゆっくりと桜をみたいときには、全生園に行きます。
正式な名前は国立療養所多磨全生園。ハンセン病の患者さんの治療施設です。
かつて聖書の時代から、その病状により偏見に晒されてきたとされるハンセン病の患者さんの治療施設、ですがいまは、地域にひらかれ、その施設内の一部は地域住民の憩いの場所になっています。家族連れ、カップル、カメラを抱えた人、子どもたち等が集い、お花見をしています。蝶々がかわいらしく飛び、鳥もたくさんさえずっています。もちろん治療されている患者さんや看護師さんの姿もあります。広々とした敷地には菜の花と桜がさきほこります。
ここで治療を受け、この施設で暮らし、偏見にさらされて来た方たちの苦しみ、悲しみ、孤独はいかばかりかと思います。園内の豊かな自然は、その刻み込まれた悲しみをすべて包み込もうとするかのように、暖かくおおらかに繁栄していました。
人間はまるで自分たちがこの地球の王者のように振舞っていますが、自然の中にいるとその感覚がとても愚かだと思い知ります。言葉を持たない自然の種、植物や空、水や鳥たちは、人間の何万倍も優しく大きな心でいるように感じるのです。
ちっぽけな人間として生まれ、自然によって生かされている、
素粒子のような私の生命。
足を止めれば私のふところに風がやさしく吹き訪れ、まるで私の心に語りかけてくれているようです。
全生園の桜 #japan from seremhi on Vimeo.
◇自然の生命の力◇