心の表象
今日、仕事からの帰り道、気分転換に大好きな川のほとりを歩いていたら、若い夫婦が散歩していた。旦那さんが、ベビーカーを押している。
二人の会話が、ふと耳に入った。それはこんな会話だった。
奥さんが「私はほんとうに、ダメな母親だと思う」とつぶやいた。
すると旦那さんが、やおら大きな声で、
「何言ってんの?!君は、めちゃくちゃかわいくて、めちゃくちゃきれいで、めちゃくちゃ良い母親なの。!」
と、どっしりした声で言ったのだった。旦那さんの声にはわざとらしさはなくて、一生懸命な気持ちが伝わる声だった。
奥さんは、照れたように少し立ち止まって、夫婦はちょっと見つめ合ったあと、のんびりベビーカーを押しながら川のほとりを過ぎていった。
私は幸せな気分になって家路についた。
暖かい心の旦那さんと、少女のような奥さん、やさしい夕暮れの川のほとりが、すごくおだやかに調和していて、すてきな光景だった。
「よい言葉」ってどういう言葉だろうと思う時、
それは、「言葉が上手」なことでも「ボキャブラリーが豊富」なことでもなくて、
そこに込められた気持ちであることは間違いなくて、
自分も、仲間や友人に心のこもった暖かい言葉をかけられるようになりたいと想う。
さて、そんな時間の後、一転、俗っぽくなって、
夕食はひやかしに、山田うどん本店に行き、かかし君を撮影。
意外なほど美味しい玉子焼きに舌鼓を打ち…
食後は自宅で珈琲を飲みながら、本を2冊。
[家族愛、その精神病理]という本がとても良かった。古い本なのだけれど、いろいろなケースが記載されている。とくに描画法の箇所が、事例が多く興味深い。記載されていた事例を少し紹介する。
これは、あるmelancholiaの女性のDAF test 自分の家族図を描いているのだが、本人が描画されておらず、かつ、家族全員が後ろ姿で書かれている。
”家族が彼女から背を向けている(期待がなにもない)””家族の中に所在がない”と、彼女が感じているであろうことが、わかる。
これは、schizophreniaの男性が描いた家族図とのこと。髪型や顔の造作の似通った人間の顔が奇妙な連続性をもって描かれている。それぞれの顔から感情を読み取ることがとても難しい絵だと感じた。 schizophreniaの患者さんと接している時の、不思議な感情、プレコックスな感じ、をこの絵からも受けた。
そんなこんなと、考える今夜。
人の心が表象されているもの。言葉や、絵、かたちあるもの。
そんなものたちがとても大好きだ。
私の宵はまだまだ続く。